平塚町住宅マンション建替組合理事長 建替え体験記
『平塚町住宅』は、1959年に竣工した、鉄筋コンクリート造4階建、総戸数23戸の分譲マンション。管理組合では本住宅の再生について、10年以上も前から勉強・検討を重ね、2016年1月に建替え推進決議を可決し、建替え計画委員会を発足、同年11月に事業協力者として東京建物が選定され、その後、2018年4月に区分所有者全員の賛成で建替え決議が成立しました。建替組合理事長とともに、この建替え事業を担当した東京建物プロジェクト開発部の曽我が、その建替えまでのプロセスを語りました。
平塚町住宅マンション建替組合理事長
建替えを検討したきっかけを教えてください。
2000年頃、管理組合の理事長を務めていた私のもとに、一部の区分所有者の方から建替えの提案がありました。まもなく築40年を迎える時期で老朽化は進んでいましたが、その時点ではまだ早いかなと思いました。その上で、2001年の定期総会時に、「大規模修繕の実施は次回で最後とし、その先は建替えを目指して検討に入りたい」という説明を行いました。その後は建替えセミナーへの参加や勉強会を開催しながら、検討を重ねていきました。
建替えの動機として「耐震性の不足」が挙がることが多いのですが、本件の場合は耐震性が高く、いろいろな選択肢がある中で最終的に建替えを選ばれたんですよね。
左:東京建物 プロジェクト開発部 曽我
大規模修繕前に耐震診断を実施した結果、Is値0.8で新耐震基準を満たしていました。とはいえ、建物は老朽化しているわけで、不良箇所を一つひとつ探しながら、やはり建替えが必要だという結論に至りました。敷地を売却したらいいのでは、という意見も実際にはありましたね。
当時はマンション敷地売却制度※がなかったのですが、現在では耐震性が不足しているマンションは、行政から認定を受けた上でマンション敷地売却制度の活用が可能です。ですが耐震性を満足している平塚町住宅では、当時にこの制度があっても敷地売却は困難だったのではないかと思います。
区分所有者全員の同意があれば、敷地売却も可能ですが、この場所に住み続けたいという多くの住民の思いが叶えられなくなってしまいます。建替えが実現できたことにとても満足しています。
※マンション敷地売却制度とは、マンションの敷地を一括して買受人に売却する仕組みを指します。「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」に基づく制度となります。
事業協力者として東京建物を選ばれた理由をお聞かせいただけますでしょうか。
事業協力者を選ぶ上で、複数社に提案をしていただきました。東京建物の提案は経済条件だけではなく、何より一緒によいマンションをつくりたいという熱意にあふれていました。長く付き合っていく上で大切なのは、やっぱり人なんですよ。
コンサルタント会社も事業に参加する中で、東京建物はどのような役割を果たしていましたか。
建替組合を円滑に運営していく上での貢献度が非常に高かったです。こちらが気づかないことにも先に気づくことで、問題が起こる前に火消しを行ってくれました。
大越理事長との距離感が近く、意思疎通が容易で、我々のお願いに素早く理解を示していただき、事業をスムーズに進めることができ感謝しています。
もちろん実務の面でも中心となって進めてくれたことで、我々建替組合の負担が減り、とても楽でした。
建替え成功のポイントは、どのような点にあると思われますか。
建替えの話が出る前からの、平塚町住宅管理組合の円滑な運営がポイントだったと思っています。日常的に漏水やクラックの発生などの不具合にすぐ対応してきた積み重ねが信頼につながったのではないでしょうか。建替えについてもみなさん協力的で、意見をまとめる苦労はほとんどありませんでした。
仮住まいから戻ってこられて、新しいマンションでの生活はいかがでしょうか。
快適ですよ。『平塚町住宅』に住んでいるときは、東急線の電車の音が室内まで聞こえてきましたが、『Brillia旗の台』ではほとんど気になりません。あとは床暖房がすごくいいですね。朝起きたらまず床暖房をつけます。それで一日中気持ちよく過ごせます。
これから建替えを検討する方々に対してメッセージをお願いします。
まずは、管理組合としての日ごろの運営をしっかりとしていくこと。その上で、早めから準備を進めておくことも重要だと考えます。例えば、平塚町住宅では、前述の通り建替え検討を始めてからは大規模修繕は実施せず、修繕積立金を残した状態で管理組合を解散しました。その結果、1戸あたり数百万円の清算金を分配することができました。
管理組合の解散時に、それだけの金額を皆さんに分配できた事例はなかなかないと思います。建替工事が始まると、引越しや仮住まいなど出費が続きますから、他の組合員の皆様も本当に助かったと思います。日頃からの積み立てと、大規模修繕から建替えまでの長期的な目標を明確に立てての運営の結果だと思います。
早めの決断、みなさんへの綿密な周知、お金の算段。この3つが大切です。
成功の秘訣ですね。しっかりとご準備をされて、管理組合の皆様が理解を示されたことが良い結果につながったのだと思います。理事の方々が将来のビジョンをしっかり持って牽引していくことが大切だと、改めて実感できた事業となりました。
「平塚町住宅マンション建替計画」
設計は、グッドデザイン賞、タイルデザインコンテスト、港区みどりの街づくり賞など、多数の受賞実績のあるアーキサイトメビウス株式会社が担当。
「平塚町住宅」の記憶を継承した邸宅風景を創造し、2020年10月「Brillia 旗の台」として生まれ変わりました。
旗の台6丁目における第一種低層住居専用地域の閑静な邸宅地に計画された本物件は、住み心地の良さを叶える、住・商・医・教・公・緑が揃った住環境でありながら4駅3路線が利用可能という利便性も兼ね備えております。