諏訪2丁目住宅建替組合理事長 建替え体験記
当時、諏訪2丁目住宅を含む地域には、「一団地の住宅施設」の都市計画で容積率50%・建蔽率10%という建築条件があり、私たちの諏訪2丁目団地も、その条件の5階建・23棟の建物が建築されていました。初期入居者は若い世代が多かったため、子どもが大きくなってくると増築を考え始めましたが上述の建築条件により実現できない状況にありました。そこで私たちは、建築条件の緩和・変更を求めて東京都と多摩市へ陳情運動を起こし、それと同時に建物の改修や建替えを含めたマンション再生の検討に入りました。
その後、建物の老朽化が予想以上に進んでいたことや、90年代に入りバブルがはじけて住み替えが困難になり、定住する思考が強くなっていったこと、そして駅から近く自然が豊富で、自主管理等を通じて住民同士の関係が良好であったこと等より、建替えすることが、住民にとって最も良い選択であるとの結論に至りました。
諏訪2丁目住宅建替組合理事長
建替えを検討するにあたって、苦労された点はありましたか。
私たちの団地は640世帯・約1200人の「街」です。そこに世代、個人事情が違う様々な住民が生活していました。建替えというのは、自分の財産の変更をする事業ですので、住民一人一人の建替えに対する意識を高め、合意形成を行うことが非常に大変なことでした。
事業協力者として東京建物を選ばれた理由をお聞かせください。
建替え事業を成功させるには、事業協力会社が大きな鍵と考えていました。東京建物は、事業協力者募集の際に、「多摩ニュータウンルネッサンス構想」という、諏訪2丁目団地だけではなく、諏訪の街・多摩ニュータウン全体を復興させよう、という提案をしました。これは、私たちがこれまでの建替え運動の中で重要視していた、「住民参加のまちづくりと住民自治」という基本理念に沿うものであり、単なる建替えに留まらない、街としてのポテンシャルを向上させ未来に期待を持てるコンセプトであったことから、事業協力者として決定させてもらいました。
建て替えを検討・推進する中で印象に残っている エピソードがあれば教えてください。
私たちの団地には、高齢者のひとり住まいやふたり住まいが非常に多く、その方々が建て替え後の部屋選びをする際に、今は団地から独立した子どもたちが集まり、あちらこちらの家庭で家族会議が開かれたそうです。こうした建替え運動がきっかけとなり、家族の絆が深まったという話をよく聞きました。
このように、住民主体により建替え事業を推進してきましたので、大きな反対運動が起こるというようなことはありませんでした。
建替え成功のポイントは、どのような点にあると思われますか。
建替えを考える時、建物が古くなったから・・、バリアフリーにしたい・・、などハード面の改善を目的に建替えを考えることが一般的だと思います。しかし、私たちはどんな「まちづくり」をしたいのか、という住民の想いを重視して議論を重ねました。10年・20年先の未来を見据えた発想がベースにあったからこそ成功に至ったと思います。
建て替えで新しく誕生するマンションに対する思いを教えていただけますか。
Brillia多摩ニュータウンは、高齢者支援施設や子育て支援施設を設置するなど、「だれもが安心して住み続けられるまち」というコンセプトで計画を行いました。建替え後は、安心して快適に暮らせるマンションができると思っており、今から楽しみにしています。
これから建て替えを検討する方々に対して メッセージをお願いします。
まず住まいのある立地や歴史性、地域性等を踏まえて客観的に検証することが大切だと思います。修繕か建替えかを先に決めず、それぞれの住まいの持つ価値や住民の意識を確認しながら、自由に意見を言い合えるコミュニティをつくりながら、自分達にあった方針をお決めになる事をお勧めしたいと思います。